信濃川を眼科にのぞむ河岸段丘。冷えて霧が発生した早朝の十日町の家々に灯りがつき始めた。明け方のやわらかい光の中で波打ち、一見すると山水画のような写真になりました。ここから魚沼丘陵を越えはるか南魚沼の盆地に座す巻機山は深田久弥がたびたび訪れた日本百名山だ。手前から段丘・川・町・丘陵・遠い山、それら全体を覆う湿った空気感が風景に生気を漲らせ官能性を与える。ゆっくりと流れながらゆらめく霧は、伝説上の龍のようにこの地を守り君臨しているようだ。自然から遠ざかった人たちはそれらの存在に気が付かなくなっているのかもしれない。この地で3年に一度開催される大地の芸術祭の基本理念は「人間は自然に内包される」。威嚇や略奪や侵略など、再び世界は畏れを知らない世界に突入し始めているような気がする。
EOS5DMarkⅣ 74mm 13秒 f:7.1
©️photo by Nakamura Osamu