朝夕の気温が下がり始める初秋には広々とした新潟平野にも時々霧が発生します。霧の中で朝日が登りはじめ、ハザ木の真ん中を十字に仕切る畔に佇むシルエットが新潟版ミレーの農夫のようだ。まわりの田んぼのコシヒカリは風でなぎ倒されているが、もともと倒伏に強い種類なので却ってこの気温差が米の味を良くしてくれるという。この写真はだいぶ前のカット。残念なことにオブジェのように残った形の良い一列はすでに切られてしまった。稲を干す必要性が無くなった新潟平野のオブジェ群は、ほぼ新潟県内にしかなかったという点で、火焔型土器の分布にもよく似ている。時代は違っても生活の中で厳しい自然と相対する中から生まれた個性的な文化は新潟の共通項だと思える。
PENTAX67 200mm
©️photo by Nakamura Osamu