砂岩泥岩互層の地層が波に侵食されて美しい海岸の地形を形成した椎谷観音岬。そのやわらかい露頭のおかげで、岩の間にはヤドカリやサザエなどたくさんの貝が住み、海岸は貝殻を拾う人も多い。中越沖地震の日、この岬の崖が崩れたため、この手前で迂回し刈羽村に取材に入った。特に柏崎や長岡や小千谷などの中越地域に産出する石油や天然ガスなどはこの地層に由来する。2022年の県内の天然ガス採掘量は国内の76・7%、原油は国内の65・4%の採掘量(新潟県調べ)。日本石油(現在のENEOS)は最初に柏崎で興された。2011年の東日本大震災以来国内の原子力発電所は発電停止が続いていますが、世界最大級の原子力発電所が写真の向こうに見えます。西山町出身の田中角栄が首相だった時に電源三法を成立させた結果、柏崎と刈羽村にまたがる地区に巨大な原子力発電基地ができました。石油やガスの地層の向こうに巨大な発電所が望めるこの場所は昔も今も日本のエネルギー事情に大きな影響を与え続けています。この風景は風光明媚さを越えて過去現在未来において、日本の政治や経済に深く関わってきました。
この説明を書いている時にニュースが入ってきました。東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働の是非を問う県民投票条例の制定を求める市民団体が2025年3月27日、約14万3000人の有効署名を花角英世知事宛てに提出、4月16〜18日の臨時議会で採決される見通しだ。有効署名は条例制定の直接請求に必要な3万6000人(有権者の50分の1)の4倍近くに。20日以内に議会を招集し、自らの意見を付けて議会に条例案を提出することになっている。柏崎市と刈羽村の原発推進団体が反対姿勢を示している中、県議会の自民党や知事がどう判断するか。しかし2011年以降の住民投票条例案はことごとく否決されてきたらしい。住民投票条例案に(主に自民党)議員が反対する理由は、住民投票について「賛否二者択一で意見を集約できない」「選挙で選ばれた者が判断する」「専門性の高い技術の安全性などの論点は素人に馴染まない」という理由だ。
住民投票はお金がかかることではある。しかし市民が選挙で議員を選ぶ時は原子力発電の再稼働云々のみで判断するわけではありません。議員も原子力発電の技術に詳しいわけではないでしょう。代表民主制の機能不全や補完的な役割において、住民投票という民主主義的な手続きを行政や議会や一人一人議員が尊重し活用しながら自治を進めて行くべきだと思う。自分の決定に責任を持つことが市民社会の成熟につながると思います。
PENTAX645Z 29mm 1/60秒 f:20
©️photo by Nakamura Osamu