この川の少し上流の地域で私は育ちました。私の遊び相手は山や川の自然か冬の雪でした。個人的にも世の中的にもお金で何でも購入できる時代ではなく遊ぶものといえば自然ばかりだったのです。魚野川や支流の沢やせせらぎなど、思い出が多く残っています。今は堤防でガチガチに固められた魚野川も子供の頃には早瀬があったり森に囲まれた大きな瀞があったりして謎の場所も秘密の場所もあり、冬には鮭が群れをなしていて、川というのはこういうものだと思っていました。友達と遊んでいても、いつしか遊び相手は石ころだったり虫や魚になっていました。いつしか魚野川に限らず川は子供の遊ぶ場所ではなくなり、昔はたくさん生息していた水の中の生物もあまり見ることができなくなりました。少し前に人が作った親水性護岸なるものも人の手が入らないとあっという間に荒れ放題となった所が多く見られます。
その魚野川を通る度、過去の悲しい出来事のひとつを思い出します。子供時代によく遊んだ向かいの子供も大きくなり大学一年の冬休み、実家に戻ったその日の飲み会で行方不明となり、3ヶ月後に下流の小千谷で見つかったと新聞に小さな記事が載り、その時始めて川に流されたことがわかりました。親が厳しかったせいもありその子とは川で遊ぶことはなかったと記憶しています。身近なところで親しめる自然は脅威と裏腹でもありました。開発された自然は人との距離を遠ざけます。遊んでいた川や山での怖い記憶も自然の教材でした。
PENTAX67 105mm
©️photo by Nakamura Osamu