写真は自分の表現であり、自分のその時の記録でもあると思う。もちろんさまざまな意見があり、1枚の写真でも両方に分かれることもあればどちらも兼ねているものもある。また時間が経てばその意義や価値が変わる。ひとりの作者でも両様の撮り方もできるだろうし、思っても見なかった評価のされ方をすることもある。実はこの写真を撮影したときの状況をよくは覚えていないのですが、海岸を馬が一頭走っていたのは一瞬のことで、反射的に数枚撮影し気がついたら視界から消えていたという感じで、まるで夢や幻のように思える経験でした。たまたまその時はタングステンフィルムが入っていたカメラで撮影したので青い写真になってしまったわけです。果たしてこれは記録と言えるかどうか?しかし気になる写真として私の中では長持ちしている写真です。一瞬を記録するカメラの特性という点からすればタングステンで撮影したという事実を含めて記録だし、いまだに夢のような瞬間をイメージとして増幅させてくれているという意味では結果的に表現になっているのかもしれません。この写真が50年後や100年後にどのように受け取ってもらえるかはわかりません。普段私が写真を撮るときは対象をよく見ているので、その時の状況をよく覚えていることが多いのですが、別の方向から考えるきっかけを与えてくれるアンチ写真論なのかもしれません。少なくとも自分の中では。
カメラ:PENTAX67 300mm photo by Nakamura Osamu